シバちゃんのため息

「甘粕正彦 乱心の曠野」について

「甘粕正彦 乱心の曠野」(佐野眞一著)を読み終えた。どちらでもいいけど曠と荒、真と眞、かな換がややこしいな、最近、この種の変換がすごくやりにくい。最新のATOKは知らないが、MSの変換は日本文化を破壊しそうな気がする・・・・陰謀?・・・まあそんなことはいいけど。

著者の取材努力はとにかくすごい。本人や子供、妻、親戚、同僚・・・よくぞまあ調べたものである。ただ、そのわりに結局、私には得るものはなかった。

最初のほうに落合莞爾の記事を意識した箇所がある。
序章のP14、「甘粕にはいまも奇譚めいた伝説が語り継がれている。甘粕は千葉刑務所を出所後、フランスに渡ったことになっているが、実は関東大震災前にも、軍の密命を帯びてひそかに渡仏している。そこでフリーメーソンの組織に秘密裡に入会した甘粕は、その組織を通じて無政府主義者の大杉が国家権力とのダブルスパイであることを突き止めた。それが、関東大震災下の大杉殺しにつながった・・・・。」
このような噂を佐野氏は都市伝説として一笑に付し、この伝説についての言及はそれ以降はまったくない。
つまり、佐野氏は、大杉以下三人は純粋に無政府主義が国家に災いをもたらすという理由で関東大震災のドサクサに紛れ憲兵隊が殺したもので、甘粕はその責任者として一人で罪を背負い、真実を語ることなく最後は自ら命を絶ち、秘密を墓場までもっていったと結論付けている。

そして全編を通して彼の人となりを紹介し、いかに皆に一目置かれたか、そして皆に尊敬されたかを語らせ、一番私の知りたかった「なぜ大杉を殺したのか」にはいっさい答えていない。つまり、甘粕が殺したわけではないことを証明する本なのである。
甘粕といえば大杉事件であり、この事件で一番肝心なのは、「誰が殺したのか」はもちろんだが、「なぜ殺されたのか」が一番の問題だと思うのである。
前述のように、都市伝説と言っているが、この伝説の出自は書かれていない、しかも大杉が国家権力とのダブルスパイ・・・と書いている。これは意味不明だ。ダブルスパイというのはある組織のスパイなのに反対の組織にその情報を漏らすことである。国家権力のダブルスパイとはどういう意味なのか説明がされていない。これはでたらめである。
つまり、ネットで流れている情報をわざと価値がないように見せるためのテクニックなのだ。

彼は落合氏の記事を知らないはずはない、なぜ吉薗周蔵の手記を検証しないのか。吉薗が手帳に書いているように、「大杉のような無政府主義者は殺してもたいした意味はないのに・・・」は真理を付いているのだ。
落合氏が書いているように、「大杉は後藤新平に頼まれ、上原元帥とフランスの秘密結社との関係を探りにフランスへ渡った。」、そして何かをつかみ、それが原因で甘粕に殺されたというほうがはるかに信憑性が高い。この本にはいっさい上原元帥の名前は出てこない。大杉の内縁の妻が青山教会を調べていたことにも触れていない。
そこに私は佐野氏の本性をみる。意図的に事件の本質をごまかしている。
やれやれ、体制側の書いた本は注意しなければならない。

上原元帥は明治時代にフランスに滞在し、落合氏によるなら、そこで現地のワンワールド家系と婚姻関係を結んだ。相手はアルザスのユダヤ系家系イザベル・ポンピドーで、その兄がメソジスト教会の牧師である。やがて女の子が生れたという。
さらに、甘粕が刑期を終え、フランスに遊学する時に同伴したのがその生んだ娘なのだという。
大杉はワンワールド派に対抗する後藤に依頼され、それらの事情を探りにフランスへ行き、事実をつかんで日本へ帰った矢先に殺されたのである。

謀略史観と通常史観では、同じ事件でもこのような大きな差が出てくる。落合氏の解読する吉薗日記は一級資料としての評価はされないであろうが、世間でもてはやされている読ませるために書かれた各種の日記よりもはるかに真実を物語る。

以前、佐野氏の「カリスマ」というダイエー中内氏に関する本を読んだことがある。この本も個人の取材能力をはるかに超えたドキュメンタリーだった。恐ろしい本である。一人のジャーナリストがかける内容ではないと思った。
もちろん、田中角栄を失脚させた立花隆も同じである。
どんなにすぐれたジャーナリストでも個人の力には限度がある。普通では書けないほどの内容の時は疑わなければいけない。

組織が用意した資料を基に、組織のために書かれた本であるといっておこう。もちろん内容に間違いはない。ただ、真実から意識的に離れたところを書いたのである。
現在はやはり佐野氏の「阿片王」を読んでいるが、心して読まなければならない。
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by sibanokuni | 2009-06-05 09:47 | マヨちゃんの陰謀論
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